法人化したフリーランスが、家族を役員(合同会社なら業務執行社員)にしている場合、フリーランス新法の保護対象からも、フリーランス協会の賠償責任保険の補償対象からも外れます。しかも両者で「一人」の判定基準が違います。確認したことをまとめておきます。

フリーランス新法の対象(特定受託事業者)

法の保護対象は、個人なら従業員を使用していない場合、法人なら代表者1人のほかに役員がおらず、かつ従業員を使用していない場合です。

ここでいう役員には、合同会社の業務執行社員も含まれます。合同会社は定款で別に定めない限り、社員全員が業務を執行します(会社法590条1項)。出資だけのつもりで家族を社員にしても、業務執行社員として登記されていれば「役員がいる法人」になります。

一方、「従業員」の範囲は狭く、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇うことを指します。事業に同居親族だけを使っている場合は該当しません。

つまり新法では、家族を役員にすると対象外、同居の家族を雇うだけなら対象のまま、ということになります。

対象外になると受けられない保護

新法が発注者に課している義務は、取引条件の明示、給付の受領から原則60日以内の報酬支払、ハラスメント対策の体制整備などです。6か月以上の業務委託(更新で通算6か月以上になる場合を含む)を中途解除したり更新しない場合は、少なくとも30日前までの予告も必要になります。対象外なら、新法によるこれらの保護は受けられません。

ただし、取適法(旧下請法)は役員数ではなく資本金・従業員数で判定するので、新法の対象外でも、発注者の規模によっては取適法の保護を受けられる場合がありそうです。取引条件の明示、60日以内の支払、報酬の減額禁止などは取適法にもあります。報酬の支払日や金額は、そもそも個別契約書に書かれている場合が多いです。一方、ハラスメント対策や中途解除・不更新の事前予告は新法独自の規定なので、これらは契約書の定めに頼ることになりそう。

3か月更新と事前確認

3か月更新の契約で、エージェントが満了の1か月以上前に双方の意向を確認してくれていたので、途中で解約されることはないものだと思っていました。実際には、準委任はもともと民法上いつでも解除できます。基本契約に1か月前の事前通知を入れておくのが良さそう。

受けた仕事を途中でやめることは考えたことがないですし、発注側も3か月の見通しで更新を判断するので、よほどのことがなければ中途解約はありません。6か月契約だと先の見通しが立てにくく、期間中に唐突に通知が来る可能性もあります。3か月ごとの更新で、1か月以上前に意向を確認するほうが、事業リスクは小さいと思います。

新法の対象外でも、この運用が保たれていれば、新法の事前予告とほぼ同じ水準が実務で確保されます。

フリーランス協会の賠償責任保険

協会の一般会員には、情報漏えいや納品物の瑕疵などに備える賠償責任保険が自動付帯されます。IT系には魅力的な補償です。

この補償と費用負担の少なさで申し込みましたが、加入して2か月ほどで条件変更の連絡が来ました。2026年8月20日の改定で、法人の場合は従業員を雇用していないことが補償の要件になりました。協会に問い合わせて確認した扱いは次のとおりです。

  • 代表者以外に業務執行社員が登記されている法人は、補償対象外
  • 家族を役員から外しても、給与を支払う人がいれば「従業員がいる」扱いになる
  • 非常勤で決算期だけ手伝う、といった臨時スタッフとして整理できる余地はある

基準の違い

フリーランス新法 協会の賠償責任保険
代表者以外の役員 いれば対象外 業務執行社員がいれば対象外
家族への給与 同居親族のみなら従業員に当たらない 給与支払いがあれば従業員あり扱い
従業員の基準 週20時間以上・31日以上の見込み 給与支払いの有無

家族を役員から外し、同居親族として給与を払う構成にすると、新法では対象に戻れる可能性がある一方、協会の保険では対象外のままになります。同じ「一人法人」という言葉でも、制度ごとに物差しが違います。

まとめ

  • フリーランス新法の対象(特定受託事業者)になるのは、個人事業主か役員1人の法人で、従業員を使っていない場合(同居親族のみなら可)
  • フリーランス協会の賠償責任保険の対象になるのは、従業員を雇っていない個人事業主か、役員が自分1人で給料の支払いも自分のみの法人(青色事業専従者や繁忙期の日雇いアシスタントは、全員が一般会員なら可)

筆者は弁護士・税理士ではないので、個別の判断は専門家に相談してください。

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